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Rio_Heart(モンスターハンター小説)

【8】

 「さっきも聞きましたけれど、何か言い残したことはありますかタケルさん?」
 「…」

 何かとっても気の効いた、ユーモアのあるセリフを残していきたいと思っていろいろ考えたけれどなんにも思い浮かばなかった。
 自分の呼吸の音がひゅうひゅう言って随分うるさく感じた。

 ハートの背から降りてきていたリオさんは、しばらくそのまま無言でわたしをじっと見下ろしていた。
 わたしは地面に仰向けにはいつくばっていたのでリオさんのクロムメタルコイルのスカート状の鎧の中が見えないかなと思ったけれど、視界がぼんやりしていたし脚にはクロムメタルブーツを履いているだろうから覗いてもあんまり意味がないのかなとかいろいろ考えていた。

 「ああそうだリオさん。」
 「なんですか?」

 「この間お約束したリオさんの肖像画、完成してますからトドメ刺したらせっかくだからお納めください。背中のポーチに入ってますんで適当にひっくり返して持って行ってくれて結構ですから。」
 「…そう。」

 リオさんはハートにわたしの息の根を止めさせる前に、わたしの体をひっくり返して背中のポーチから完成した肖像画を取り出した。
 画用板に描いたものだから紙みたいにくしゃくしゃにはなってないにしてもひょっとしたら割れちゃってるかもしれないなと心配したけれど、どうやら特に破損無くポーチの中に納まっていたみたいだった。

 「素敵に描けてますね。」
 「あなたがステキだからですよ。」
 「褒めても何も出ませんよ。」
 「その分わたしの全身からは血液が噴き出ているから安心です。」

 「これ、もらっちゃっていいんですか。」
 「どうぞ。」

 「ありがとうございます。」


 「そろそろ意識が朦朧としてきたからひとこと。
 ハンター狩りは適当に気が済んだらやめておくといいでしょう、わたしは違いましたけれど手練れのハンター相手だったらあなただって無事に済むとは限らないのですから。」
 「とっても大きなお世話だと思います。」
 「そうですね。」


 「死体は桜の樹の下にでも埋めておいてください。」


 そこでわたしの意識は途切れた。



 眼が覚めたのはどれくらいあとだったか判らない。
 少なくとも眼が覚めたということは殺されずに済んだということだ。
 大量出血で死んではいないということは岩に激突した傷は致命傷ではなかったということらしい。
 姿の見えないリオさんもわたしにはトドメを刺さないで去ってしまったらしい。

 命拾いはしたけれど随分格好のつかない顛末になってしまった。
 わたしは回復薬グレートを飲みながら、せめてもっとユーモアのあるセリフが吐ければよかったのになあという思いで頭がいっぱいになっていた。


 傍らにはわたしの紅碧の対弩が、鈍器でつぶされたように壊されて転がっていた。


 また会えるかな、リオさん。

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